さじは投げられた

 困ったことが起きた。「第七回雑文祭」のお題が難しすぎるのである。

 知らない人のために説明を試みると、雑文祭というのは、定められた条件(お題)を満たす文章をみんながそれぞれ思い思いに書き、それをWEB上に発表し合っては、やれあの人の作品は面白いだとか、このお題をそういうふうに消化しましたかとか、いやいやそれは反則ですよーなどと言って盛り上がるイベントのことである。昨今さまざまな形の雑文祭が催される中で、「第七回雑文祭」は最も格式が高く伝統ある「公式」雑文祭の第七回を冠するものであり、不定期に開催されるこの「公式」雑文祭に参加することは、雑文を書く者にとって大変名誉なことであるため、今回を逃すと次はいつになるか分かったもんじゃないと、みんなこぞって参加するのである。

 私もWEBの隅っこの方でひっそりと雑文を書きつづけてはや五年。僭越ながらも雑文書きと名のっている以上、このイベントには是が非でも参加したいと思っている。しかし、そのためには「お題」という越えるべきハードルがある。「お題」とは、雑文祭に出展する作品が満たしていなければならない条件のことで、今回懸案となっている「第七回雑文祭」には、次のようなお題が用意されている。

  • 題名 (七を含む)
  • 始め 困ったことが起きた。
  • お題1 七つの顔
  • お題2 落ちは未定
  • お題3 蒋介石の招待席
  • 結び 来年もいい年でありますように。
(※ここで、お題1〜お題3は、文章中にこれらの語句を入れるということ)

 これらのお題は、私の感ずるところでは、非常に難しいものとなっている。題名一つにしてもよく分からないことがいっぱいだ。「(七を含む)」を普通に解釈すれば、「七」という漢字を含んでいれば何でもよいということになる。しかし、あまり普通でない解釈をすれば、「(七を含む)」という題名そのままを使わないといけないような気もしてくる。さらに、人知を超えた超宇宙的解釈をすれば、「(七を含む)」は一九九九年七の月を表す。つまりすべてはノストラダムスによって予言されていたんだよ! な、なんだってー! それはともかく、普通に解釈して「七」という漢字を含んでいればよいということにしても、「切」という漢字に「七」が含まれていることから、題名に「切」を含んでいればいいことになるのではないだろうか。しかし、「切」に含まれている「七」の部分は本当に「七」だろうかという疑問もある。ただ「七」に似ているだけなのではないだろうか。それなら「七」に似ている「匕(さじ)」という字を題名に含んでいればいいということになりうる。これを許せば「匕(さじ)」を含む漢字「匙」「化」「北」「比」「旨」「花」「死」等でもいいということになり、もはやなんでもありの世界に持ち込むことができてしまうではないか。「そんな些事にこだわるべきではない」とおっしゃる方がいるとは思うが、これは私の性分なので勘弁していただきたい。

 さらに、問題は3つのお題にもある。「七つの顔」はまだいい。「七つの顔」を文章中にさりげなく含ませることは簡単である。例えば、朝起きたら突然顔が七つになっていたとか、街を歩いていたら偶然七つの首を持つ怪獣を見かけたとか、日常的な範囲でクリアできるお題だと言える。しかし、「落ちは未定」はどうだろうか。「落ちは未定」と文章の中で出せば、読者は素直に「落ちは決まってないんだな」とは思ってくれないだろう。「文章中でそんなことを言うくらいなんだから、きっと逆にすごい落ちを用意しているに違いない」と妙な期待を抱きかねない。落ちを期待されることほど雑文書きにとって重いプレッシャーとなるものはない。すなわちこれは、雑文書きにとって最も酷なお題なのである。この重圧にかろうじて耐えることができたとして、満身創痍で進んだその先には何があるのか。そう、「第七回雑文祭」最大の難所とも言える「蒋介石の招待席」が待ち受けているのである。いったい誰が考えたのだろうか。いったい誰がこのダジャレをお題に入れようと言い出したのであろうか。「このダジャレを入れたのは誰じゃ」と思わず叫びたくなるが、それを言ってしまっては救いようがない。

 「第七回雑文祭」に参加するためには、このように幾多の困難を乗り越えなければならない。それは不可能と思えるほど難しい。私にはできそうもないことばかりだ。「そこをなんとかしてクリアするから面白いんじゃないか」とおっしゃる方もおられるだろう。しかし、私はもうダメである。これだけの困難を目の前して、心が折れてしまったのである。「第七回雑文祭」への参加はあきらめるしかない。もう、匙を投げるしかないのである。

 しかし、私も雑文書きの端くれであるからには、どうにかして「第七回雑文祭」と関わりを持ちたい。この一大イベントを、ただ指をくわえて見過ごすようなことはしたくない。こんなとき、フランスの大哲学者、サジカルの言葉を思い出す。

「人間は一本の匙にすぎない。だがそれは考える匙である」
 私も考えなければならない。「第七回雑文祭」において自分にできることを。しかし、お題の厳しさにくじけてしまった私に、いったい何ができるというのだろうか。そうだ。他にも私と同じように、参加したくてもハードルの高さにできないと嘆いている人がいるかもしれない。または、「公式」雑文祭ということで、敷居の高さに悩んでいる人もいるかもしれない。その人たちのためにもう一つ雑文祭を作ってはどうだろうか。気軽に参加でき、それに参加することによって雑文祭の楽しさを知り、または思い出し、ひいては「第七回雑文祭」への参加意欲を取り戻すきっかけとなるような、そんな雑文祭があってもいいのではないだろうか。私の中に新たな意欲がわいてきた。問題が解けないと悩んでいたのに、作る側にまわってしまえば全てが解決されたかのように思えてしまうから不思議だ。こうして私は「第七回雑文祭」において自分にできること、自分の役割について、一つの結論に到達した。


 ここに、「第さじ回雑文祭」開催を宣言する。

≪概要≫
第七回雑文祭」のお題のきつさにさじを投げた人が参加する雑文祭です。

≪お題≫
以下の条件を満たす文章を開催期間中にWEB上にアップして下さい。

  • タイトルは「さじは投げられた」とする。
  • 「些事にこだわる」「すくいようがない」を文中に含む。
  • 「匙」「化」「北」「比」「旨」「花」「死」のいずれかの漢字を使用した格言をでっち上げ、「さじ」という音を含む名前の人が言ったことにする。
    例:「匙は投げるものではない。舐めるものだ」 ――サジンスキー
※タイトルにルビをふる必要は必ずしもありませんが、なるべくふるようにして下さい。また、ルビをふるのが困難な環境にある人は、「匕(さじ)は投げられた」のようにしてかまいません。
※文中に含む語句については、漢字をひらいてはいけませんが、ひらがなを漢字に直すのはOKです。順番も別に気にしない。
※格言を言う人物は、実在の人物でも架空の人物でもかまいませんが、実在の人物が言ったことにして問題になってもわたしゃ知りませんよ。

≪開催期間≫
2005年11月22日(いい夫婦の日)午後7時00分〜
2005年12月22日(冬至)午後7時00分まで

≪その他≫
参加者は参加作品のあるページから、このページへリンクをはって下さい。まとめを作るときの参考にします。その際、ここにはることをお勧めします。また、当雑文祭は「第七回雑文祭」への参加を制限するものではありません。むしろこれに参加することで、「第七回雑文祭」への参加意欲を取り戻していただけたらと思います。

≪お願い≫
この雑文祭は、当初は「第六回雑文祭」のときの「第大回雑文祭」のようなジョーク雑文祭を目指していましたが、我が子が育ってくるにつれ情がわいたのか、本気の雑文祭に仕上げてしまいました。したがって、広く世に知られたいと考えていますので、みなさまにご助力いただければ幸いです。


 さて、これにて「第七回雑文祭」における私の役目は終わったことになる。これで年末を心置きなく過ごせるというものだ。これから「第七回雑文祭」に参加しようという方は、私のように匕(さじ)を投げずに頑張って頂きたい。来年もいい年でありますように。



やっぱ第七回雑文祭に参加するという人はこちらからどうぞ

≪参加作品一覧≫(発見順)
 「さじは投げられた」(牧山)
 「匕(さじ)は投げられた」(大西科学
 「匕(さじ)は投げられた」(半茶)※051126
 「(さじ)は投げられた」(踊ってむーちょ。
 「匕(さじ)は投げられた」(on cloud nine
 「匕(さじ)は投げられた」(鉄血くだらな帝國
 「匕(さじ)は投げられた」(≪STAY CLOSE≫
 「匕(さじ)は投げられた」(城と古生物のページ)※2005年12月7日
 「匕(さじ)は投げられた」(ふくろう居眠り系
 「 (さじ) は投げられた」(ある大学院生の日常生活
 「匕(さじ)は投げられた」(うねうね
 「匕(さじ)は投げられた」(ターコイズ
 「さじは投げられた」(かんなの小部屋)※2005年12月11日
 「匕(さじ)は投げられた」(かすみ荘
 「匕(さじ)は投げられた」(KGEC:クロスワードへおいでなさい。
 「匕(さじ)は投げられた」(雨谷の庵
 「匕(さじ)は投げられた。」(人生に油を加える為の日記
 匕(さじ)は投げられた」(としての私
 ――「匕(さじ)は投げられた」(もーりょの空想)※2005年12月13日

おかげさまで当雑文祭は無事閉幕となりました。
参加して下さった皆様および宣伝して下さった皆様に深くお礼申し上げます。
ただいま「第七回雑文祭」が絶賛開催中です。
「第七回雑文祭」は12/22日が締め切りというわけではないので、まだ間に合います!
参加しましょう!


!!! ネタばらし !!!
えー、たいへん時期を逸したかたちになりましたが、ここでネタばらしを行いたいと思います。
まずは次の3作品をご覧下さい。

(さじ)は投げられた」(踊ってむーちょ。
(さじ) は投げられた」(ある大学院生の日常生活
さじは投げられた」(かんなの小部屋)※2005年12月11日

この3作品に共通するものがあることにお気づきでしょうか?
実は、これらの作品は、当雑文祭の裏ルールに協力してくださっています。
その裏ルールとは、
「お題にある格言を言わせる人物を、サジ=ニコダールという名前にする」
というものです。
当雑文祭を開催するときに、私は
「雑文祭に参加しない人は絶対に見ないが、参加しようと考えている人はきっと見る場所」
があることに気づきました(どこかはあえて言いません)。
そして、そこに裏ルールを書き、それを満たす雑文がたくさん出現すれば、
何も知らない読者を驚かせることができるのではないかと考えました。
結果はご覧のとおり、3名の方がこの裏ルールの存在に気づき、適用してくださいました。
これらの雑文を読んで、サジ=ニコダールという謎の人物が現れることに
読者のみなさんがちょっとでも不思議に思っていただけたのなら成功です。
ご協力いただいた茶川さん、melvy さん、かんなの小部屋さん、ありがとうございました。
これにて当雑文祭は本当に終了です。
ここまで付き合っていただいたみなさん、本当にありがとうございました。

2006年1月3日 牧山


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